「何で避けようとしなかったんだ?」

「えっ!」

さっきの光景を蒸し返され、私は視線を泳がせた。

「……はぁ。言いづらいなら聞かないけど」

その言葉を聞いて、一安心する。

私が避けなかった理由は、まだ奈津には言えない。

それは、あの日のことが深く関わっているからだ。

「それより、行くぞ」

「何処に?」

私が質問したと同時に、奈津は手を握ってきた。

急に手を握られ驚いた私の顔は、みるみる赤くなっていく。

「何処って、保健室に決まってるだろ」

「保健室?」

「保健室に行って、湿布貰わないとな。そんな顔じゃ授業出られないだろ?」

「で、でも、一人で行けるよ。この後、授業あるし」

奈津は、私の方へと振り返った。