妖精の心を貴方に

「ここは、さっきより人が多いな」

「まぁな、あっちの屋台に比べれば、多い方だな」

「これじゃぁ、どこにどの屋台があるのか分からない…」

その時、私と奈津は数人の集団とぶつかり、繋いでいた手が離れてしまった。

「あっ!」

「望美?!」

奈津が私に手を伸ばすけど、私と奈津の手はどんどん離れていく。

「奈津!」

「望美!」

やだ…、こんな所で奈津と離れたくない。

一人で皆と会うのは、怖いよ…。

そう思ったとき、誰かが私の伸ばしている手を掴んだ。

「ー!」

「たく、離れんなよ」

私の手を掴んだのは、聖夜だった。

「聖夜…」

聖夜は、軽く溜め息をつくと、私を自分の所へと引っ張った。

「望美!大丈夫か?!」

「奈津…!」

直ぐに奈津が私の元へと来てくれて、私はホッとする。

「ごめん、望美」

「ううん、聖夜が手を引いてくれたから大丈夫だよ」

「馬鹿奈津…、大切な彼女の手は離すんじゃねーよ」

「うっ…」

言い返せなかった奈津は、聖夜から視線を逸らしてしまった。