妖精の心を貴方に

「こっちはこっちで、奈津も大変だな…」

俺の後に続いて、ハヤテも家の中へと入った。

そして――――

「うーん、良いんじゃない?」

「………」

母さんに捕まって数時間、俺は母さんの着せ替え人形となって、たった今ようやく浴衣が決まった。

「まさか、お父さんのがピッタリ合うなんて、思ってなかった」

「俺だって思ってないさ」

俺の周りには、多数の浴衣が転がっている。

(一体何着来たんだよ…)

そんな俺を見て笑っていたハヤテは、飽きたのかサッカーボールで遊んでいる。

「ハヤテの奴め…」

後で覚えてろよ。

「うーん、でも髪型がいまいちね」

「髪型は関係ないだろ」

「私が嫌なの」

俺は、別に良いんだけど…。

「菊やぁ」

「何おばあちゃん?」

「これを奈津に」

「何?」

ばあちゃんが母さんに渡したのは、水晶の石がついたネックレスだった。

「何でこれを俺に?」