【望美】

「はぁ……」

美術室を出た私は、昇降口で深く溜め息をついた。

「望美、溜め息をつくと幸せが逃げるのじゃぞ?知らんのか?」

「知っています。もちろん」

なんか、最悪なことばかり起きた気がする。

先輩に絵は破かれるし、私の体から絵の妖精と名乗る、変な女の子が出てくるし。

しかもこの子、語尾に『じゃ』ってつけてるよね?

もしかして、本当は女の子のかっこしたおばちゃんなんじゃないのかな?

「私は、ちゃんとした女の子じゃ」

「えっ!」

今、心読まれた!?

「妖精は、人間の心を読むこともできるのじゃ」

「だからって、勝手に読まないでよ……」

「それはすまない」

ルルは、素っ気なくそう言い捨てた。