妖精の心を貴方に

絵を描くきっかけになったのは、コンクールで金賞をとったときだった。

「私絵を描くの好きだから」

絵のコンクールで金賞をもらったとき凄く嬉しくて、お母さんや奈々美さん達から褒められて、それから私は絵を描くのが大好きになった。

「紀葉は?」

「私は、テニス部」

「俺は、剣道部」

二人は、それぞれ興味のある事や好きな部活を口にする。

(まずは、何の絵を描こうかな?)

始めのころ、毎日絵のことばかり考えいた。

土日は、川原へ行ったり神社に行ったりして絵を描いてた。

あの事件が起きるまでは―――

松薫中学に入学して、半年が経とうとしたとき、美術部にいた私は、コンクールに向けて絵を描いていた。

「よし!」

私は、筆を置き仕上がった絵を見下ろす。

「いい感じかも」

自分で描いた絵を触ってみる。

「できたの?望美」

「夢咲(めぐ)ちゃん」

私と同じ美術部部員の、谷本夢咲(たにもとめぐ)が、私の絵を上から下まで見下ろす。

「そんなにはっきり見なくても」

夢咲は、私と同じ一年C組で、友達も沢山いる。

「だって、望美の絵私好きだもん」

夢咲は、いつも私の絵を好きだと言ってくれた。

「ありがと、夢咲ちゃん」

友達に絵を褒められるのは、ちょっと恥ずかしかったけど、でもやっぱり嬉しかった。

「これ次のコンクールに出すの?」

「そうだよ、時間はかかったけど、自分なりには良くできたと思ってる」

「へ〜…」

その時、夢咲が冷たい目でその絵を見下ろしていたことに、私は気づかなかった。