お母さんもお父さんと同じく、仕事が忙しくて、夜はいつも居なかった。

帰ってくるのはいつも朝頃で、お昼頃にはまた出ていく、そして夕方帰ってきては、また出ていくの繰り返しだった。

「いい、火は絶対使っちゃ駄目よ!鍵は全部閉めたけど、用事がない時は部屋からは出ないこと」

「もう、分かってるよ」

これは、お母さんの口癖だった。

「じゃぁね、望美」

お母さんは、家の中扉を静かに閉めた。

「………」

お母さんが仕事に行くまで、あんなにイライラしていた私だったけど、お母さんが仕事に行くと、イライラより寂しい気持ちが、いつも大きくなっていた。

私は部屋に戻り、部屋の隅に座り込む。

「お母さんとお父さんなんて、大嫌い」

小さくそう呟き、くまのぬいぐるみを抱きしめて、ぬいぐるみに顔を埋める。

それから、数分たってわたしは目を覚ました。

「あれ?私寝ちゃったのかな?」

下へ降りてご飯を食べようとしたとき、リビングに電気が付いていた。

「あれ?」

リビングに入ると、そこには奈々美さんがいた。