その女の子は、私に何かを言っているように見えた。

(何?)

しかし、何を言っているのかよく聞き取れない。

「…気づいて……、は…く」

だけど、かすかにそう聞こえた感じがした。

「何を気づくの?」

その時、私の心が大きく揺らいだ気がした。

「望美?どうしたのじゃ?」

「!」

ルルに名前を呼ばれて我に返る。

「ぼーっとしていたように見えたのじゃが」

「えっ!な、な何でもないよ」

もう一度川原の方を見たけど、女の子の姿はそこには無かった。

(幻覚だったのかな?)

「望美早く行くのじゃ」

「う、うん」

ちょっと気になるけど、幻だったのかしれない。

私は再び神社と歩き出した。

「…時間がない…。早く気づいて、貴方の心に」

私の後ろ姿を見ていた女の子は、寂しげな表情でそう呟いていた。