妖精の心を貴方に

「そう畏まらなくてええんやぞ、疲れたでしょうに、今冷たいお茶入れたあげる」

「ありがとう、おばあちゃん」

家の中へと入ると、おじいちゃんが縁側でうちわを仰ぎながらラジオを聞いていた。

「おじいさん、望美たちが来ましたよ」

「おっ!ほんとか」

「こ、こんにちは」

私は、すぐ側に鞄を置いてその場に正座する。

「よく来たのう、大きくなったなぁ~」

「そんなこと無いよ」

私が最後にここに来たのは、六年生の夏。

ここから中学までの距離はかなりある。

「おじいちゃん、望美美人になったでしょう」

「そうじゃのう、望和実(ののみ)に似て、美人になってきたのう」

「あ、ありがとうおじいちゃん」

望和実は、私のお母さん。

莎原々望和実(ささはらののみ)で、お父さんが花崎和人(はなさきかずと)、お父さんは奈々美さんの同級生だったみたいで、よく二人で上位争いをしていたと、奈々美さんから聞いたことがある。