妖精の心を貴方に

ボールへと視線を戻した先輩から、俺が蹴ったボールはどんどんゴールから離れて行った。

「は、はあああ?!」

「翔、行ったぞ!」

ゴールから離れていくボールは、背番号11と書かれた男のもとへも向かっていった。

「本当に奈津君のボールは、いい加減ですね。ボールを取る僕の身にもなってくださいよ」

俺は、ゴールへとボールを蹴ったわけでなく、俺のすぐ後ろまで迫ってきていた、夜城翔(やしろしょう)へとパスを出したんだ。

俺がボールを蹴る前に、翔がゴールから離れた位置へと走り出し、それを確認した俺が、パスが届きそうな位置へとボールを蹴る。

それが、玲緒から俺に伝わった作戦内容だ。

「いっけー!」

翔は、空いていたゴールめがけてボールを蹴り込み、ゴールキーパーの左隣を通り過ぎたボールは、勢い良く編みを後ろへと引っ張った。

「よっしゃ!」

「やっりー」

「さすがだ」