「行ってきま〜す」

「望美」

扉のドアノブに手をかけたところで、名前を呼ばれた私は一度振り返った。

「あまり、無茶しちゃ駄目よ」

「………分かっています、お母さん。行ってきます」

「気をつけてね」

家を出た私は、どこまでも広がる青空を見上げて大きく伸びをした。

「うーん、今日もいい天気だな〜」

私の名前は、莎々原望美(ささはらのぞみ)。

桜中に通う中学二年生。

今日も、朝から学校へと行く途中です。

「なんか、今日はいいことあり――」

「望美ー!」

「――そう」と言いかけた時だった。

後ろの方で話を遮られ、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。