「一番良い席取りたいと言っていたから、もう着いてる頃だと思います」

じゃあ、席取りは史絵たちに任せて大丈夫そうだ。

「だから望美、早く行こうよ」

「う、うん!」

お弁当が入った鞄の取っ手を、私は強く握りしめた。

きっと、奈津なら喜んでくれる。

そう思って、脳裏に奈津の笑顔が過った。

「ふふっ……」

「……あの子、何か妄想してるんですけど?」

「そっとしておきましょう。今の望美を現実に戻してはいけません」

「そ、それはそれで駄目じゃね?」

「ふふっ……はっ!私ったらまた!」

我に返って二人を見た時、いつもながら呆れた表情を浮かべていた。

恥ずかしくなってきて、私は両手で顔を隠した。

最近は、なるべく変なことを妄想しないようにしていたのに、つい気が緩んじゃうと妄想が始まってしまう。