真夏の青空に、ミンミンミンミンジーワジーワと、けたたましい蝉の鳴き声が木霊している。鼓膜に張り付いて一生頭のなかで鳴り響くのではないかとすら思えてきて、ゲンナリしながら病院までの道のりを賢と並んで歩いた。

 背中も脇も、スカートの中でさえも汗で熱気が体中にまとわりついている。

「ああ、暑い」
「もう暑いって言葉禁止」

 賢が口を開けて、今日何度目かもわからない単語を口にする。聞くだけで余計に暑く感じる。

 毎日この炎天下の下で部活で走り回っているくせに。そんなことを言えば、制服とユニホームじゃ雲泥の差があるんだよ、と言われた。

 たしかに賢の言うように、制服は特に通気性が悪いように思う。今時この八月下旬に登校日なんてものがあるのも信じられない。よその学校ではないところも多いと言うのに。

「雅人もサボるならオレもサボればよかった」
「雅人はサボったわけじゃないから」

 ぶつぶつと文句を続ける賢は、それでも納得ができていないようだ。

 登校日の今日、雅人は病院に行くと言って学校には来なかった。最近は部活にも顔を出しているらしいけれど、今日はどうしても病院にいなくちゃいけないらしい。

 まあ、登校日の学校なんて、久々に会う友だちと話をするだけの日、みたいなものだから休んだってかまわないと思う。

 真知は今月頭に家族でグアムに行ったらしく、十日ぶりに顔を合わせたけれどきれいな小麦色に焼けていた。聖子とは一昨日も会ったばかりなので全く久々ではなかったけれど、今日も元気だった。クラスメイトの大半が海に行ったようで、休み前よりも健康的に見えた。わたしはほとんど家の中に閉じこもっていたから、余計にそう見えたのかもしれない。

 わたしの夏休みは、想像通りおとなしい日々だった。

 お盆休みにお母さんと田舎に帰っただけで、その他は真知や聖子と出かけるか、賢と時々夜に公園で話をしたり。そのくせ夏休みの宿題は半分も終わっていないのだから、明日から本気を出さなくてはまずい。もう少ししたら賢と一緒に宿題を消化しようという話をしている。

「暑いなあー」
「美輝も言ってんじゃん」

 雲一つない空を見上げ汗を拭いながらひとりごちると、それをすかさず拾った賢に突っ込まれた。