「あっ、いいえ。大丈夫です。全然、大丈夫です」


柚は慌てて必死に言う。
そりゃそうだ。
柚は昨日、一晩中、花畑 蜜の事が気になって眠れなかったのだ。
このまま家に居ては頭から花畑 蜜の事が離れないと、気分を変える為に早々に家を出た。
いや、違う。
ほんとは早く保育園に行きたかった。
花畑 蜜の匂いのする場所。
そして、もしかしたら、ふらっと早く花畑 蜜が現れるんじゃないかと……。


「そう?ほんとに大丈夫?」


そんな理由など分からない園長は、柚が単に遠慮しているようにしか見えない。
柚は必死で『大丈夫です』を繰り返し、何とか園長を納得させた。


「疲れたぁ」


柚は机に突っ伏して、ため息をつく。


「大丈夫?」


耳元で優しい声がした。