「いいから!見せなくて!触らないし!」


秋のほんのり冷たさを乗せた風が、柚と花畑 蜜の髪を揺らす。


「柚先生、可愛いね」


「な、な、なんですって?」


からかわれて怒った柚が振り返る。
幸い、花畑 蜜は服を来ていた。
柚がホッとしたのもつかの間、いきなり抱きしめられた。
強い。
全力でない事くらい分かる。
柚に対しての強さ。
男の人の力ってこんなに強さを感じるんだ。
そして、落ち着く。安心する。広い。
不覚にも柚は花畑 蜜の腕の中でしばし癒された。


「いい匂いがする」


柚という女性から香る、匂い。
作られた、普段、テレビ局でプンプンむせるほど嗅がされるあの匂いではない。
普通の、何気ない生活の中にある匂い。
ハンドソープ、ほのかに香るシャンプー。
そして。
女性はどうしてこんなに柔らかいのだろう。
花畑 蜜は今までとは明らかに違う世界にいる。