遠い空に住む人へ。



 かおりは目を閉じて、心の中で言葉を投げる。



 あした、みんなで小さな旅に出ます。

 この旅から帰ってきたら、いまよりも、世界は綺麗に見えそうです。

 だから、もしよかったら私たちと一緒に行きませんか?

 旅の終わりには。
 
 そちらの世界も、もっと綺麗に見えるでしょう。

  

 
 梅雨が明け、季節は夏になろうとしている。
 最後の春の風が、空に吸い込まれていく。