一通り食事が進んだ後、信也が神妙な顔をしながら言いだした。

「あのさ、誰も言わないから言うけど。さっきから、康孝さんの席にいるこれは何?」

 アキラはそれを、見もせずに答える。

「それは康孝さんだよ。お腹がすいてそうだったからニンジンあげたら、すごい勢いで食べてだして。……見えないならメガネぐらいしてこいよな」

「コンタクトにしたんだよ。っていうか、どう、ひいき目で見ても、康孝さんじゃないだろ、これは!これはやっぱり、間違えようもなく―――うさぎ、だよな?」

「それは康孝さんだよ」

「黙れ、もういい。優子ちゃん」

 信也は私にすがるようなまなざしを向けた。

「康孝さんが置いていったみたいなの」

「―――」

 信也は憮然とした表情で、康孝の席でカリカリカリカリ、ニンジンを食べ続けている白い大きなウサギを見下ろした。