「かおりちゃん、アキラ本当に寝てた?」

 康孝は少し真剣な顔でかおりに聞いた。

「うん、なんだか綺麗なオルゴール抱えながら。」

「オルゴール?もしかして」

 信也が不満そうに康孝を見る。

「もしかして、アキラにだけ、お土産買ってきたんじゃないだろうな?」

 その言葉に康孝は、居心地悪そうに大きな体を縮めた。

「すまん。もうお前たち二人とも、ここにはいないと思ってたもんだから」

「アキラはいると思ったの?」

 かおりは不思議そうに康孝を見上げる。

「ああ、だってあいつの失ったものは、手に入りそうで入らないものだからな」

「どういうことですか?」

 私の問いに康孝は、かおりを見る。

「がんばれば見つけられるものなら心配ない」

 康孝は次に信也を見る。

「二度と手に入らないと分かっているものなら、あきらめることもできる。でもな―――」

 康孝は私をしっかりと見据えた。

「失った記憶ばかりは、なんとも言えない」