アルマクと幻夜の月



かすれた声が耳に届き、それと共にアスラの意識は覚醒した。


「……はは、うえ」


唇が震えて上手く動かない。


ナズリの手がゆっくりと持ち上がり、アスラの方へ伸びる。

アスラはその手を両手で強く握った。


「母上、なぜですか……」


ナズリを見下ろして、アスラは言う。

不思議と涙は出なかった。


「なぜ、飲んだのですか。わかっていたはずなのに」


なぜ、自ら死を選ぶようなことをしたのか。


「あたしを、置いていくのですか」


言って、アスラは深くうつむいた。

――結局、自分のことか。母の死の際に、心配するのは自分が一人になることなのか。

己れの心の醜さに、どうしようもない嫌悪感がアスラの心を覆う。