アルマクと幻夜の月


「買えないぞ」


追いかけてきたイフリートの声に、アスラは足を止めた。


「薬は買えない。その水差しに、薬を買えるだけの金に換えられるような価値はない」


「は? そんなわけ……」


言いながら、腕に抱えた水差しに視線を落として、アスラは目を見張った。


あれほどくすみのない金に輝いていた水差しが、錆びついて色あせ、所々変色してボロボロになっていた。


「それが金に輝いていたのは、私の魔力が漏れていたからだ。

その水差し自体は、もとは鉄に金の顔料を塗っただけの、ほとんど価値のないがらくただ」