アルマクと幻夜の月


アスラはしばらく困惑した顔をしていたが、やがて大きなため息をつき、


「おまえな、人をおちょくるのも大概にしろよ」


と、呆れた顔をイフリートに向けた。


「人間が水差しに入るわけないだろ」


至極当然のことを言ったはずのアスラだが。


「これだから、ちんちくりんは……」


やれやれ、というようにため息をついて、イフリートは言った。


「愚かな小娘だな。自分の狭い世界での常識しか信じないなど」


「なっ……」


「誰が、私が人間だなどと言ったんだ」


あまりに予想の斜め上を行く発言に、アスラは思わず押し黙る。