それは、水晶窟の「ある道」に採掘の手が伸びた日から始まったようだった。
水晶窟の中は広く、幾本もの細道に分かれていたが、最も細く最も危険なある道を、鉱夫は長らく避けて通っていた。
だが近年になってアズラク水晶窟の水晶をほとんど取り尽くしてしまい、
仕方あるまいとその道を新たに開拓しようとしたのが、マルダの父だった。
狭く足場が悪いその道で取れる水晶は、大きく透明度が高かったため、高値で売れた。
しかし奥へ奥へ進んでいくにつれ、まるでそれを阻むように落石が増えるようになった。
さすがに危険だと手を引いた者もあったが、マルダの父はそれでも奥へ進み、
――その道の先で、とんでもないものを見た。
「おっきな――人の背丈よりもずっとおっきな水晶が、あっちこっちから無数に生えてたって、おっちゃんが言ってた」
おっちゃん、というのはマルダの父の仕事仲間で、その遺体を持ち帰った張本人でもある。
その男とマルダの父の進んだ細道の先は、山の腹の中にいることが信じられなくなるほどの広い空洞になっていた。
そしてその地面と言わず天井と言わず、岩肌という岩肌すべてから巨大な水晶が生えていたという。



