アルマクと幻夜の月




丸い生地はきれいに八等分されていて、一切れ手に取ると、生地に挟まれたチーズがとろけて伸びる。


一口ふくむと濃厚なチーズの香りとシロップの甘さが口いっぱいに広がる。



「初めて食べたが、美味いな」



思わず頬を緩めてつぶやくと、マルダは目を丸くしてアスラを見上げた。



「え、食べたことなかったの? アスラ姉ちゃんて、すっごい金持ちなんだね」



当然のように言い当てられて、アスラがきょとんとしていると、


「普通みんな、クナーファくらい食べたことあるもん。食べたことないのは、すっごい金持ちかすっごい貧乏かのどっちかだよ」


と、マルダは呆れ顔で言った。



そうなのか、とシンヤを見ると、シンヤも当然のように頷く。


そして意地の悪い笑みをアスラに向ける。



「姐さん、自分が庶民に溶けこめてると思わないほうがいいよ。

挙動に無駄に品があるし、口を開けば世間知らずだし。俺ら貧民から見たらバレバレ」