アルマクと幻夜の月




余計な御世話、と、アスラはかるく舌を出して、けれど内心ではすこし安心していた。



(いつも通りに戻ったようでよかった)



アスラが斬られたときのイフリートの反応は尋常ではなかった。


なにかよくわからない力を――おそらくは「魔力」と呼ばれるものを――肌を刺すように強く感じた。



あのままイフリートを止めなかったら、マルダがどうなっていたかと思うと鳥肌が立つ。


斬られたとはいえ太腿で、すぐに止血すれば命に別状はないのは明白なのに、なにがそこまでイフリートを冷静でなくしたのか。




(それに――)



あのとき。

怪我をしたアスラを見るイフリートの目は、アスラを見てはいなかった。


――まるで、アスラを通して別の誰かを見ているような虚ろが、そこにはあった。