アルマクと幻夜の月




興奮しきった少年をなだめて、アスラたちは宿屋へ向かった。


イフリートには恥ずかしいからと言って降ろしてもらったが、それでもイフリートは心配なようで、

またよろけたりすればいつでも支えられるようにか、いつもよりもアスラの近くに張り付いていた。



適当な席に座って、隣のテーブルの客が食べているチーズのクナーファ(ケーキ)を少年がもの欲しそうに見つめていたので、アスラは店主にそれを注文した。



それから運ばれてきた水を一口飲み、「さて」と、テーブルに肘をついて話を切り出す。



「あたしはアスラっていう。あんたの名前は?」



「マルダ。アスラ姉ちゃん、それ行儀悪いよ」



「うるさいな」



アスラは言い返して、吹き出しそうになったシンヤを睨みつける。



イフリートも苦い顔をしていた。


一国の王女が平民の子供に行儀の悪さを指摘されるとは何事か、とでも思っているのだろう。