アルマクと幻夜の月




「すこし血を流しすぎた。しばらくは無理をするな」



「なんだ。それも、おまえがなんとかしてくれたのかと思っていた」



「魔法は万能じゃない。万物に作用することができるが、無から有は生み出せない。


傷口だって、たまたまきれいに切れていたから塞げたのだ。魔法で治るから怪我をしても平気と勘違いされてはかなわん」



そう言われて、なら例えば肉片が飛び散るような怪我をすれば魔法でも治せないのか、と思って、アスラはその想像に顔をしかめた。


たとえ治せても、そんな痛い思いはなるべくしたくない。



ともかく今は、目の前でアスラを睨みつける少年をなんとかせねばならない。


アスラは少年の目を見返し、小さく微笑んだ。



「信じてもらえないかもしれないが、あたしたちはただの旅の者で、今日ビッラウラに着いたばかりなんだ。


おまえの父親のことはもちろん知らない。けど、イフリートが魔人なのは本当だ」