*第三夜 4*


体が熱い。

燃えるようだ。



遠くで知っている声が名を呼んでいる気がしたが、そんなものはどうでもよかった。



ただ、ただ、炎のように熱く、氷のように冷たい荒れ狂う何かが、身の内で渦を巻く。



許さない。

すでに朦朧とした意識が、それだけを強く訴えかける。


許さない。

許すな。


主を傷つけるものなど、決して許すな。



その身を駆る衝動のままに、目の前にいる何かに手を伸ばす。


こいつを殺せ、と、意識が叫ぶ。主を傷つけるものはすべて、排除しろ――!



「……イフリート!」



声とともに手を掴まれて、イフリートは手を止めた。



一度。そして二度。

瞬きをして、目の前にある己の手を見つめる。


その手を伸ばした先にある、怯えた子供の顔。


そしてその手を掴んだ、細い誰かの手。

――アスラの手。