アスラは布でくるんだ金の水差しを抱えて、そっと、自室の壁にかかった大きな白い布の前に立った。


大の男の背丈ほどもある大きな布だ。

曲がりなりにも第一王女であるアスラの部屋は、姫にしては質素ではあるが、それでも高価な調度品で飾られている。

そんな部屋の中、壁の半面を覆うように掛けられた粗末な白い布は、ひどく場違いだった。


一つ舌打ちをして、アスラはその白い布に手をかけると、勢いよく剥ぎ取った。


布の下から現れたのは、豪奢な額に飾られた大きな肖像画だ。

描かれているのは、もう二年は会っていない父王の――今は病の床についている父王の、若かりし頃の姿。


口元を凛々しく引き締めた絵の中の人物を、射殺すような目で睨みつけて、アスラはその大きな絵を力一杯押した。