*第三夜 水晶の娘と夢見る竜 1*


「うわぁ、すっげぇ! あんなもん、マタルで見たことねぇや」


「ばか」


露店の水晶細工を指差して歓声を上げたシンヤの頭を、アスラは容赦なく引っぱたいた。


「マタルから来たとわかるようなことを言うな。どこから情報が漏れるかわからないんだから」


「気にしすぎじゃ……」


叩かれた頭をおさえながシンヤが文句を言うが、アスラに睨まれて黙り込んだ。


「あたしたちの場合はイフリートがいるから、よっぽどのことがないと追手に捕まるとは思えないが、気をつけるに越したことはない。

イフリートの魔力だって無尽蔵じゃないんだし」


アスラにそう言われ、シンヤはアスラの斜め後ろを歩くイフリートを見上げた。


イフリートは表情を少しも変えず、アスラについて歩いている。