「……この金、いったいどれほど高価なものを使ってるんだ」


どこの産地だろうか。

これほど純度の高い金を生産できる国が、アルマク朝の周辺にあっただろうか。

思い返してみても、アスラには覚えがなかった。


アスラも王族だ。

王女の務めとして周辺国の言葉や歴史、地理や産業については習っているが、

金の生産が盛んな西隣の国・カラバル帝国も、そこまでの技術はないはずだった。


(この金、もしかすると――……)


高く、売れるんじゃないか。


ふと頭に浮かんだその考えを、アスラはとっさにどう扱っていいものか図りかねて、苦い顔をした。


王女としては、この発想は限りなく間違っている。

王宮内で見つけた誰のものかもわからない宝を売って貨幣に替えようなど。