アルマクと幻夜の月




「では明日、手はず通りに」


「ええ。〈イウサール〉の頭領のアスラと言ったわね。その名も役人に告げてよかったの?」


「もちろん。むしろ言ってくれ」


「わかったわ」


女は頷くと、「それじゃ」と言って足早に歩いて行く。

その背中を見送って、アスラも来た道を戻ろうと、歩き出した。


その後を追いながら、渋面を作ったイフリートが「おい」と呼びかける。


「どうした?」


「どうしたもこうしたもあるか。名など名乗って、どういうつもりだ。捕まりたいのか」


その言葉に、アスラは、フン、と鼻を鳴らして笑った。


「そんなわけあるか」


「だったらなぜ……」


言い募ろうとしたイフリートは、しかし途中で言葉を止めた。

前方に、人が近づいてきたからだ。


ただの通行人、ではなく、確実にアスラに近づいてくる男が三人。

三人とも、衛兵の制服を着ていた。


アスラと数歩の距離を開けて立ち止まった衛兵たちを見て、イフリートの顔がこわばる。

対してアスラは冷静そのものだ。