「おまえの憎む領主は、それほどの苦しみと引き換えにしてまで殺す価値のある者か?」


シンヤは答えない。

アスラを睨みつけるその目には覇気がない。

そんなシンヤにぐい、と顔を近づけて、アスラはにやりと笑ってみせた。


「なぁ、『復讐』じゃなくてちょっとした『仕返し』なら手を貸してやるけど、どう?」


「は?」


「あたしだって意味もなく人殺しになりたくはないから、おまえの仇打ちに手を貸すことはしたくない。

でも放っておけばおまえは一人で死にに行きそうだから、妥協案だ。

領主に怪我を負わせない程度の仕返しをしよう。それなら手を貸してやる」


状況が飲み込めずにポカンと口を開けたままのシンヤに、アスラはかまわず話し続ける。


「〈イウサール〉のやつらにも手伝ってもらうよう、明日頼みに行くけど、おまえも来るか?」


「〈イウサール〉に手伝わせる? どうやって?」


「それは明日のお楽しみ」


そう言うと、シンヤは胡散臭そうに顔を歪めた。