アルマクと幻夜の月




だから〈イウサール〉に入ったんだ、とシンヤは言った。


「〈イウサール〉に入れば、いずれ領主の屋敷に忍び込む機会があるかもしれないと思った。

一人で忍び込むより、大勢で計画を立てて忍び込んだ方がまだ勝算がある。仇を取るにはそれしかねぇと思った」


だが、それも叶わなくなってしまった。

――彼は追放されてしまったから。


だから一か八かの勝負のつもりで、一人で行こうとしたのだろう。


「……シンヤ、おまえが命をかけて仇を取っても、母上は喜ばないぞ」


真剣な顔で諭すように、アスラは言った。

とたん、シンヤの眉がピクリと動いてその目つきがさらに険しくなる。

シンヤがなにか言おうと口を開いた、そのとき。


「なんて、な」


ふいにアスラが言って、自嘲的な笑みを浮かべた。


「そんなことはわかってるんだろ? わかってても、許せない。母上のためじゃなくて自分のために、おまえは復讐がしたいんだ」


あたしもだよ。


小さく小さくつぶやかれたその声は、シンヤの耳に届いたのだろうか。


「なぁ、でも、殺すのはやめておけ。領主を殺そうとすれば、成功しようとすまいと、おまえも捕らえられて殺されるぞ」