「あたしたちも鬼じゃない。何か事情を話してくれさえすれば、領主に報告しないでおいてやる」
どうする? と笑ってみせるアスラを、シンヤはもともとつり目がちな目をさらに吊り上げて睨みつける。
だが、選択の余地などなかった。
「…………領主を殺そうと思ったんだよ」
ようやく吐き出した言葉に、アスラもイフリートも、さして驚きもせずに頷いた。
「ま、そんなところだとは思ったよ。アーデルの仇、か?」
「それもあるけど、それだけじゃない」
アスラの言葉を否定した声は、いつもの彼のそれよりもいくぶんか低い。
ふいに漂いはじめた不穏な空気に、アスラは眉をひそめた。
「……母ちゃんの仇だ」
一瞬、なにを言われたのかわからなくてアスラは固まった。
「仇って……おまえ、母親は体が弱くて寝込んでるって」
戸惑いを隠せない様子のアスラを、シンヤは鼻で笑う。
「あんなもん、嘘に決まってんだろ。あぁ言えばけっこうみんな見逃してくれるもんで」
ちょっと考えればわかりそうなもんだけどねぇ、と、シンヤはつぶやいた。



