アルマクと幻夜の月




「な、な、何だ今の……!?」


「何って、挨拶ですが」


「あ、挨拶!? っていうか、そもそもおまえは誰だよ!」


男の手から自分の腕を抜いて、アスラは無意識に男から一歩距離を取った。

動揺している頭を落ち着けるため、一度深く息を吸って、吐く。


だが、自分を落ち着けるための行動はすぐに無意味になった。


「ああ、これは失礼を。――私はキアン・ベネトナシュ。ベネトナシュの第五王子です。あと、こちらは付き人のリッカ」


男の――キアンに紹介され、女の子がペコリと頭を下げる。

だが、アスラはそれに反応することができなかった。


これが動揺せずにいられるだろうか。

――ベネトナシュの第五王子といえば。