脚が痛い。

でもスリの少年を見つけなければ。

スられた財布にはかなりの額が入っているのだ。


よし、と気合いを入れ直して、アスラは再び走り出した。

――が。


ドンッ、と正面から鈍い衝撃を受けて、アスラは後ろへよろめいた。

人にぶつかったのだ、と悟ったときにはもう立て直せないくらいにバランスを崩していて、アスラはそのまま倒れていく。


尻餅をつきそうになったアスラをすんでのところで支えたのは、ぶつかられた男だった。


「君、大丈夫かい?」


男は柔らかな声でアスラに言う。

その声にどこか聞き覚えがある、と思って、アスラは顔を上げた。