アルマクと幻夜の月




ともすれば怒りで震えてしまいそうになる手を、意志の力で押さえつけて、アスラは言った。



「あんたが母上の何をそんなに憎んでいたのか、あたしは知らないし、知りたくもない。

知ったところで、その訳が何であっても、あんたが母上を殺したその罪、決して許す気はない」


スルターナの瞳に絶望が影を落とした。このまま殺される、と思ったのだろう。

しかし言葉とは裏腹に、アスラはスルターナの首元から刃を離した。

そして「イフリート、行こう」と小さく言うと、スルターナも侍女たちも、

誰もが動けないでいる中、窓の方へ歩き出す。


「あたしも馬鹿じゃないから、今あたしが何を叫んでも、無駄なことくらいわかってる」