アルマクと幻夜の月




呆気なく落ちた母の手を弱々しく握って、アスラはただ呆然としていた。


――生きて、だなんて。


この王宮で、母を亡くして、どうやって。


これまでだって、それはひどい扱いだった。

アスラ付きの侍女は一人残らずスルターナに辞めさせられ、アスラやナズリのための食事は用意されず、

スルターナの取り巻きには顔を合わせる度に嫌味を言われ。

それでも、王の寵妃であるナズリがいたから、アスラが命じれば皆、嫌々ながらも従うしかなかった。


ナズリがいなくなれば、本当に、誰もいなくなってしまう。


ナズリはアスラにとって、大切な母でもあり、自分の身を守る盾でもあった。