ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「でもさ……そのダブルデート、花音の彼氏くんは何とも言わなかったわけ?」

「……」

瞳の発言に、広げた化粧品をポーチの中へと片付けていた手を止める。


あたしの彼氏……って。


「その言い方やめてくれる?」


目を細くして注意すれば、「えー、だって彼氏じゃん?」と言い返され、あたしは言葉を詰まらせた。


彼氏っていうのは他でもない、圭太くんのこと。


半ばヤケクソになって、『付き合うことになった』と、口裏を合わせた。

そんなあたしを圭太くんは、クスクスと馬鹿にするように笑うばかりで。


「ほんと思ってもみないこと言い出すよな」


石丸くんと大西さんが離れて行った後、苦笑しながらそう言われた。


「ダブルデートなんか企画してどうすんの?」

「……」

「朝日の気持ちが傾くとでも思ってんの?」

「……」


あーもうだから、圭太くんの言葉には乗せられないつもりだったのに。

……っていうか、


「圭太くんの考えてること、ぜんっぜん分かんないんですけど!」


あたしはキッと睨みつけて、そう叫んでいた。