ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***



「やっぱり。来ると思ってた」


クスクスと苦笑するのは――圭太くん。


「……」

あたしは冷ややかな視線を彼に向けた後、回れ右をする。

「あー、待ってって。せっかく来たんじゃん」

パシッと腕を掴んで引き止められて、圭太くんを睨みつける。

「そんな怖い顔すんなって」

「誰のせいよ」

「え、俺?」

クスクスとからかうように笑う、その態度にため息を吐かずにはいられない。


今、あたしが立っている場所は、圭太くん達の通う学校の敷地内。

昨日メッセージをもらってから、どうしようかすごく悩んだ。


行ったところで気まずいだけで、石丸くんとの関係が何も変わらないのは分かってる。

こうして圭太くんにからかわれるのも、何となく予想は出来ていた。

だけど……。


「来いって言ったのは圭太くんでしょ」


悩みに悩んで考えて、決心したのはついさっき。

不審者扱いも覚悟して、ひとりで他校に乗り込んだのは、来いって言ったのが圭太くんだったから。