ハチミツみたいな恋じゃなくても。


石丸くんに想いを伝えた直後は、苦しくて悲しくて、あんなに泣いていたっていうのに……。

今はもう瞳のことを考えてあげられるくらいの余裕が、心の中にある。

それは……。


「やっぱり何かあったんだぁ〜?」

落ち込みモードはどこへやら。
にたーっと、いつものからかう表情であたしを見る瞳。

「調子に乗るの早すぎ」

「でも、何かあったんでしょ?」

キラキラした眼差しを向けられ、あたしはため息をついた。


「もう少し落ち込ませておけば良かった」

「え、なに?」

「何でもないよ!圭太くんともちょっと話しただけで、特に何かあったわけじゃないし!」

言いながら、あたしは立ち上がった。

勉強机の上。充電ケーブルに刺したままのスマホを取ろうと思って。


瞳に言われて気付いたけれど、そういえばあたし圭太くんに何も言ってない。

別に頼んだわけじゃないし、結局は石丸くんに言われたからだったわけだけど……あんな遅くまで一緒にいてくれたのに。