ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「ちゃんとした彼女、ね……」

もう既に暗くなった空を見上げて、圭太くんは静かに呟く。

あれ?ちょっと本気で考えてる……?


心なしか真面目にも見える表情に、少し身を乗り出す。

すると、じっと見つめていることに気づいたのか、圭太くんは突然こっちを向いて――。


「な、に……?」

言ったのは彼じゃない……あたし。


振り向いた圭太くんは、何を言うでもなく、無言で。

あたしを見つめるから、戸惑った。


その目は何故だか……寂しそうで。


初めて見るかもしれない表情に、困惑する。

もしかして何かいけないことでも言った……?


「あの………」

「帰ろうか」

「え?」

「もうそろそろ帰っても大丈夫でしょ」


寂しそうに見えた表情から一変。

圭太くんは笑って、人差し指で自分の目の下をツンツンと指した。


「あ……」

気付けば、涙はいつの間にかすっかり乾いていた。

確かにこれなら、もう家に帰れる……って。