ハチミツみたいな恋じゃなくても。


***


もう本当に何やってんだか……。


頭を冷やす……わけにはいかなくて、代わりに水道水を手に当てながら、本日2回目の自分へのため息。


『会いたい』なんて、何を今更思っているんだろう。

……ううん。何をまだ、の方が正しい。


とにかく、ダメだ。

キュッと蛇口を閉めて、ペーパータオルで手を拭く。

そしてすぐに、ポケットからケータイを取り出した。


【役目は果たしたので、先に帰ります】


宛先はもちろん瞳。

飛び出した勢いで、カバンを持ってきていて良かった。


気付かれたら、きっと連れ戻される。

分かっているから、あたしは足早にカラオケボックスを後にした。




それからすぐのことだった。

ケータイがブルブルと、けたたましく鳴り響いたのは。