ハチミツみたいな恋じゃなくても。



「あの時の圭太くんは優しかったのにね」


思い出せば、今でもチクンと胸の奥が痛み、きゅっと切なくなる失恋。

それでも、その翌日からも登校することが出来ていたのは、圭太くんのおかげだった。


ただひたすら泣きじゃくっていたあたし。

何をしてくれたわけでも、何を言ってくれたわけでもないけれど、圭太くんはずっとそばにいてくれた。

泣き止むまで……ずっと。


圭太くんが一緒にいてくれたから、ひとりじゃなかったから、あたしは何とか顔を上げることが出来た。


だから……ね。

圭太くんには本当に心から感謝していたんだけどなぁ……。


思い返しながら、チラッと彼に目を向ける。

すると圭太くんは「今だって優しいじゃん?」と、苦笑にも似た笑顔をあたしに向けた。


どこが……。

声には出さず、心の中で呟く。

圭太くんの雰囲気は、昔とは随分変わった。

今だって人がフられた直後だっていうのに、軽いノリで話しかけてくるし。