「ひとつ聞いてもいい?」
「なに?」
響くような彼の声。
聞き返しながら、本当は分かっていた。
「何でそんな嘘ついたわけ?」
……ほら、やっぱり。
そりゃあ、そうなるよね。
「それは……」
あらかじめ用意していた言い訳を言いかけて、口を閉じる。
本心を伝えず誤魔化すことは、きっと出来る。
石丸くんも、多分それを望んでいる。
でも……。
ゆっくりと顔を上げて、彼の顔を見る。
夕日を背にあたしを見つめ、少し目を大きくする石丸くん。
「あの時と同じだね」
「え……」
更に大きくなった瞳を見つめ、あたしは小さく笑った。
夕焼け色に染まるグラウンドにふたりきり。
思い返すのは……あの日。
「あたしが石丸くんに告白したとき」
忘れたなんて言わせない。
今から約3年前のあの日。
最後の試合が終わって、学校に戻ってきて、あたしは石丸くんをグラウンドの隅に呼び出した。
そして……
「石丸くんのことが、好きですっ……!」
生まれて初めての告白をした。



