「……」
一瞬流れる沈黙。
リョウくんは驚いた顔を見せた後、気に食わなそうに「チッ」と舌打ちをした……と思ったら、
「ふーん……そっちは上手くいってんだ？」
「は？」
急に勝ち誇ったような顔を見せてきて、あたしは眉間にしわを寄せる。
「石丸だったっけ？嘘ついて近付いた男と、上手くいってんだろ？」
「なっ……」
何を言っているのか分からなかった。
だけど、そのすぐ後に彼の言葉の意味を知ることになった。
「……それ、どういうこと？」
背後から聞こえた声に、あたしの背筋が凍りつく。
振り返らなくても誰だか分かったのは、その声の主があたしにとって特別な人だから。
「石丸くん……」
彼の姿を確認して、思わず声が震えた。
何てタイミングの悪さ……いや、違う。
「嘘とか近付いたとかって、何？」
「それは本人に聞いてみればー？」
怖い顔をして訊ねる石丸くんに、リョウくんはヘラヘラと笑いながら答える。
完全に面白がっている顔……。
石丸くんがあたしの後ろにいるのを知って、わざと都合の悪いことを言ったんだ。
全ては瞳にフラれた腹いせといったところか……。
何て小さな男なんだろうと呆れて、ため息が溢れそうになる。
……ううん、今はそれどころじゃない。
