ハチミツみたいな恋じゃなくても。


何であたしが悪いようになってんの。

圭太くんがイライラさせることばかり言うからじゃない。


スタスタと早足で歩くあたし。それを、

「ちょっと待ってって。蜂谷ー」

圭太くんが名前を呼びながら追いかけてきて。

「もっ……」

『しつこい!』って、言おうとしたとき――。


「中村先輩っ!」


女の子の声がした。


あたしも圭太くんも振り返る。

すると、後ろからパタパタと走ってきたのは、背が低くてお団子頭のかわいらしい女の子。

先輩って言ってたし、雰囲気からしても年下。


「あのっ、いきなりすみません!少しだけ、時間ありませんか……?」

あっという間に圭太くんの目の前までやってきた女の子は、チラッとあたしを気にしながら聞いた。

「えーと……」

返事に困る圭太くん。

いや、何で困るの。

「あたしのことなら気にしないで。どうぞ」

別に圭太くんがいなくても一人で行けるし。

そう心の中で呟いて、ニコッと女の子に微笑み返す。すると、女の子はペコリと頭を下げてくれた。