瞳の“弟”のことを気にかけてくれて、あくまで優しい石丸くん。
「それじゃあ俺もそろそろ部室行かなきゃだから」と、続けられて。
「がんばってね」
あたしは彼の背中に向かって、笑顔で手を振った。
石丸くんの姿が完全に遠ざかってから、手を止める。
そして、
「はぁ……」
重いため息をひとつついた。
このままずっと、嘘を突き通せると思っていたわけじゃない。
だけど、思いの外早くやってきた展開に、どうしようと思わずにはいられなかった。
……とは言っても、好きな人に嘘をついて騙していることは、あたしもツライ。
石丸くんが優しいからこそ、胸が痛む。
言わなくちゃいけないよね、本当のこと……。
程なくして、グラウンドに集まりだした人。
戻ってきた石丸くんの姿を見つけて。
ウォーミングアップを始める彼の姿を見ながら、明日瞳に話してみようと決めた。
そして……翌日。



