何だ……もう来てるんじゃん。
あたしは席を立ち、瞳の元へと向かう。
そして、
「おはよ」
「えっ、うわっ!おは、よ……」
あたしの方から声をかけると、瞳は酷く驚いた様子でビクッと肩を震わせた。
「……?」
瞳の手の中にはスマホ。
「ええと……リョウくん、だったっけ?」
興味のない人、特に男子の名前を覚えるのは本当に苦手。
連絡取ってたの?っていう意味で尋ねてみると、瞳は「あぁ……うん」と返事した。
思った通り……だけど、その反応は予想外。
だって、あんまり元気がない。
てっきり浮かれているものだと思ったのに。
昨日あれから、ふたりでカラオケに行くって言っていたっけ。
「何かあったの?」
「あー……うん、ちょっとね……」
いつもの瞳なら「それがねー」って、何でも躊躇いなく話してくる。
でも今日は言葉を濁して口を閉じた。
何だか気になる……けど、話したくないってことだよね。
それならばと、あたしは口を開いた。



