***
圭太くんに番号を教えたくなかった理由。
それは、こうなることを予想していたからかもしれない。
「いらっしゃいませー」
駅前のファーストフード店。
自動ドアをくぐって店内に入るなり、
「蜂谷」
手をひらひらと振って、こっちこっちとばかりに名前を呼ばれた。
「……なに」
店内奥の二人がけのテーブル。
半分にはがっつりセットメニューが乗っかったトレーがあって、あたしは空いていた半分にカバンをドサッと乗せた。
「あ、蜂谷も何か頼んでくる?」
「いらない」
冷たく言い放って、早く話してよと彼をじっと見る。
すると、
「あれ?何か怒ってる?」
わかっているくせに、目の前の彼……圭太くんは言いながらクスクスと苦笑した。



