ハチミツみたいな恋じゃなくても。


「ちょっと、待って」

あたしは改めてそう告げて、掴んだ手を離すと、肩に下げていたカバンからペンケースを取り出した。

そして切り取ったメモ用紙に、さらさらと11文字の数字を記入する。


「これあたしの番号。LINEもやってるし、良かったら連絡ちょうだい」

「……」

「ほら、サッカー部のこと色々聞かせてもらいたいし、連絡取れた方が便利かなって」

一瞬、戸惑った表情を浮かべた石丸くんに、あたしはにこりと微笑んだ。


大西さんが目の前にいる。

わかってて、わざと彼女の顔は見ない。


「……わかった」

何か気にする素振りを見せつつも、メモ用紙を受け取ってくれた石丸くん。

ホッとして、

「それじゃあ……」

部活がんばってと、手を振ろうとしたときだった。


「朝日ばっかりずるいなー」


すぐ横で、聞こえた声にビクッと肩を震わせる。


恐る恐る顔を向けると、


「俺にも番号教えてよ」


にっこりと満面の笑顔を向けていたのは、圭太くん。


「……」

少し前のあたしだったらきっと何も考えず、「いいよ」と即答していたと思う。

男子にむやみやたらには教えたくないけど、圭太くんとは中学からの付き合いだし、石丸くんの親友でもあるし、連絡取れたら都合の良いことも多いと思うから。

……でも。


「……うん」


あたしは喉まで出かかった「嫌だ」という言葉を飲み込んで、にこり。

無理やり笑顔を貼り付けた。